Forgotten Figures 002

Forgotten Figures 002

「…17世紀になると，古典古代の詩芸に拠って芸術詩と呼びうる作品が初めて現れ，デンマーク詩芸の父、アレボーAnders Arrebo(1587‐1637)牧師がフランスのデュ･バルタス作 “ 聖週間 “ にならって天地創造の “ 六日物語 “ をまとめた(1630‐37)。デンマーク･バロックは抒情的宗教詩人Thomas Kingo(1634‐1703)でその頂点に達する(《霊的歌集》2巻。1674‐81)。・・・」

Sorrig og glæde
Sorrig og glæde de vandre til hobe
lykke, ulykke de gange på rad
medgang og modgang hinanden tilråbe
solskin og skyer de følges og ad;
jordrigs guld
er prægtigt muld,
Himlen er ene af salighed fuld.
悲しみと喜びと
悲しみと喜びとはともにさまよい
幸福と不幸は列をなして歩み
良い時と悪い時は共鳴しあい
日の光と曇はくっつき離れ
地上の黄金は
立派に見える泥
天のみが完全な救済なのだ

デンマークの三大讃美歌作家のひとりThomas Kingo（ トーマス・キンゴ ) （1634 - 1703 )は、デンマークのバロック期を代表する詩人、聖職者/神学者でその賛美歌をキンゴが作詞している。トーマス・キンゴが生きていた17世紀のデンマークはスウェーデンとの戦争（カール・グスタフ戦争）に明け暮れ、また疫病にも悩まされるという極めて不安な時代だった。そこで彼は人々の救済と信仰を奨励するために讃歌集 “ Aandelige Siunge-Koor “ を編纂している。彼の讃歌集は現代でも変わることなく愛奏され人々の心を癒しているという。
デンマークはコペンハーゲンに設立された"Forgotten Figures”から今年の2月にリリースされたForgotten Figuresの001で、 「 コペンハーゲンの冷たく暗い環境によって引き起こされたロウテクノ。タイルトルやレーベル名の” Forgotten Figures ( 忘れ去られたフィギュア ) “ からは、抽象的な思想・観念・事物など象徴/シンボルとするものから、世界やひとびとはいつの間にか遠ざかってしまったという意味も含まれているのだろうか。それとも神や仏というのは、不可視で触れることもできないもので、物体的な像では表現したり代用できるものではなく、イスラム教の偶像破壊運動や顔面を破壊された教会の彫刻、偶像破壊イコノクラスムをも想起する。、、、、まだ素性不明の神秘的で謎だらけのForgotten Figuresの音楽は、インダストリアルではあるが、そのサラウディングにはデンマーク、コペンハーゲンのビショップ、詩人、賛美歌作家のトーマス・キンゴ ( Thomas Kingo ) のバロック世界に通じるものがあり、少々の救済のような感傷も感じる。デンマークの音楽情報に関しては、まだ未知の部分が多く、、、」と書いた。ノイズ・インダストリアルやブラック・メタル系のアーティストがトーマス・キンゴや16世紀のスペインのカトリック司祭、神秘思想家十字架のヨハネ（Juan de la Cruz,1542年-1591年12月14日）やキリスト教神秘主義に影響されているものも少なくない。そこには信仰の暗夜を通って、神との一致に向かう魂が、見え隠れする。ぼくにとってのロックやインダストリアルとは、70年代からずっと神への祈り、それに似た世界だ。