Bruce Lacey

ケン・ラッセルの映像 " Bruce Lacey as filmed by Ken Russell. Early 1960s. Oh yes. " でのフェアポート・コンベンションによる歌とフィルムで有名になったブルース・レイシーは、ロンドンの60-70年代にはニューエイジ・トラヴェラーズ・バンドのグル、変わり者のコメディアン、俳優、画家と彫刻家、ロボットと自動機械、ポスト・ヒッピー・シャーマン、ブリコラージュ発明者として君臨していた。またレイシーはビートルズの映画" ヘルプ ! " のジョージ・ハリソンの庭師としても出演していて、フェアポート・コンベンション、ボンゾードッグ・バンド、アイバー・カトラーなどとも親交を持っていた。1927年ノース・ロンドンに生まれ、若い頃はトラッド・ジャズバンドとアート、テレビ時代のコメディアンとして活動していた。2012年、美術史家デイヴィド・アランメラーがキュレーターをつとめたキャムデン・アートセンターで主要な展示会の主題になったことで再び彼の過去に残した様々な伝記が注目され、Trunkレコードから2枚の「 The Spacey 」がリリースされた。彼の怒りっぽく、エネルギッシュで、創造的な数値、自由な過激派、理想主義的で無器用な、異常な魅力がこのアルバムに収められている ( たとえ1970年代以来彼がどのような神秘主義的な不誠実な発言を抱擁しても、その迫力と魅力を一度も失ったことがない ) 。キャムデンでのその展示会には、乱雑な山のような印刷物と、シーリングにぶら下げた直立の雄鶏の骸骨の彫刻などが散在していたという。とにもかくにもパフォーマー、アウトサイド・アーティストとしてのブルース・レイシーは、英国の先見的なアーティストのひとりで多様な芸術作品を残し、60年のヴィジュアル・カルチャー、コミュニティ・アート、彫刻とrobotisedされた集団との劇場のパフォーマンスや儀式など、アヴァンギャルド・シーンにおいてジャンクでユニークな存在だった。

モンティ・パイソンにみられるように、彼も超現実主義者で英国ユーモアの意識を開拓したひとりだ。当時からマルチメディアのパイオニアであった彼はサイレンが絶叫するような不吉な電子ノイズパルスのフラッシュをシンセサイザーで奏でていた。John Lacey、Coum Transmissions、Genesis P-Orridge 、Cosey Fanni-Tutti 、 TG.などにもレーシーの音楽は少なからず影響を与えていて、密接な関係を持ち種々のパーティーが開催されていた。70年代、こうした音楽は魔法のようでもあり、最も先駆的でモダンな音楽だったといえよう。「私達は、いわゆる先史時代アート、古代の人のアートが、何かを本当に起こらせる真実のアート、審美的な理由ではなく、具体的な目的のためにそれがされた時代であったと信じる」。私的なトーテム、バイキング衣装を使った儀式によって「古代の力」を実現させた神話をこのアルバムで構築している。ここでのトラックは1970年代に製作した16mmのフィルム作品から派生したもので、ファンタジーと想像力の遊びとパワーが電子的にサウンドトラックとして構築されている。

Bruce Laceyのセルフリリースされたテープのための即興で作られた音楽と芸術映画音楽とが収録されている。1970年代、彼がモノラルのシンセを使い、ノイズ・ジェネレータ、発振器、およびフィルタを改善し拡張することに着手し独特のパルス音を生み出した。 1970年の中頃、ブライアン・イーノが彼のハクニーの古い靴工場にあったレイシースタジオを訪れたとき、イーノはシンセについての考えを次のように述べたという“ Eno told me that when he switches on his VCS3, it is silent. But when he turns on my synth it is alive, it bubbles ”。このアルバムでは、手製のシンセによる規則的な電子即興詩、録音テクニックによるものでなく具体的な原則に添ったシンセサウンドをパレットにして、無邪気な子供のように電子遊びをしている。